「健康は自分で守る」時代へ──でもまだ遠い?“セルフメディケーション”の認知率わずか28.5%の現実
「セルフメディケーション」という言葉をご存じだろうか。
これは「軽い病気やけがは自分で手当てをし、健康管理を日常的に自ら行う」ことを指す。高齢化と医療費の増大が進む今、このセルフメディケーションの考え方は、医療制度を支える重要な柱として期待されている。
ところが、その現実は厳しい。
2025年7月24日の「セルフメディケーションの日」に、横浜市の老舗薬局チェーン「株式会社横浜サカイヤ薬局堂」が行った調査によると、“セルフメディケーション”という言葉を知っていた人はわずか28.5%。さらに、記念日の存在を知っていた人は、わずか1.2%という結果となった。
調査は同社が展開する調剤・ドラッグ・フィットネス各事業部の顧客993名を対象に実施。最も認知度が高かったのはフィットネス事業「カーブス」の顧客で、41.0%。運動習慣がある層ほど、健康やセルフケアに対する意識が高いことがうかがえる。一方で、薬に直接関わるドラッグ事業部の顧客でさえ、認知度は14.5%にとどまっており、まだまだ啓発が必要なことが浮き彫りになった。
セルフメディケーションは決して難しい話ではない。風邪の初期症状には市販薬を使う、毎日の体調を記録しておく、定期的な運動や食事の改善に努める──そんな小さな「自分でできるケア」が積み重なっていくことで、医療機関に頼る頻度を減らし、健康寿命の延伸にもつながる。
ではなぜ、これほどまでに浸透していないのだろうか。
その背景には、日本人の「医療機関依存体質」や「健康教育の不足」があると言われている。何かあればすぐに病院へ、という文化が根強く、体調管理や予防という分野に対しては「なんとなく自己流」で済ませてしまいがちだ。専門知識が必要と感じてしまうことも、セルフメディケーションを遠ざけている一因だろう。
こうした課題に対し、サカイヤ薬局堂は企業として本格的な啓発活動に乗り出している。
- 顧客向けのわかりやすい資料の作成・配布
- LINEや店頭での情報発信
- 運動・薬・市販薬選びの専門知識を活かした教育プログラム
- セルフメディケーションの日に合わせたイベントやキャンペーンの開催
など、各事業の強みを生かしたアプローチで、地域住民の「健康リテラシー」向上を目指している。
創業92年のサカイヤ薬局堂は、これまでも横浜市を中心に地域密着型の薬局・ドラッグストアとして、生活者に寄り添ってきた。現在では保険調剤やドラッグストアに加え、女性向けフィットネスクラブ「カーブス」や高齢者向け宅配弁当、エステサロンなど、多角的に“健康を支えるインフラ”としての役割を果たしている。
同社の広報担当者は「今後も“セルフメディケーションのパイオニア”としての役割を果たし、誰もが“自分の健康を自分で守れる”社会の実現に貢献していきたい」と語る。
医療費が右肩上がりのいまこそ、自分の健康としっかり向き合う時代だ。
“体調が悪くなったら病院へ”という発想を、“まずは自分でできることから”に変える──それがこれからの新しい「健康の常識」になるかもしれない。