「価格勝負だけじゃない」――入会特典は“手軽さ”と“選べる自由”で差がつく
最近の調査が示したのは、入会特典の価値が「金額」だけでは測れないという当たり前だが重要な事実だ。株式会社DIGITALIOの調査では、過去に教育・フィットネス・美容系サービスへの入会・検討経験がある20~60代588名のうち、8割以上が「入会特典の有無や内容を気にする」と回答。実際に入会した人の8割超が「特典が入会に影響した」と答えており、特典は新規顧客の“最後のひと押し”であることが改めて浮かび上がった。
一方で、顧客が最も不満に感じるのは「受け取りの煩雑さ」(34.0%)。ここから見えるのは、特典そのものよりも「どう受け取れるか」が重視されている現実だ。「オンラインで受け取れる」「追加手続きが不要」といった“手軽さ”が最優先され、全世代の約87%がオンラインギフト受け取りに抵抗がないと答えている。つまり、デジタルで即時に完結する特典は、顧客の心理的ハードルを大きく下げる強力な武器になる。
さらに注目すべきは「選べる自由」の力。交換先を自由に選べるデジタルギフトが「うれしい」と答えた人は80%超、特定の商品券より好意的という結果は、個々の趣味嗜好を尊重する現代の消費者心理をよく表している。企業側にとっても、在庫管理や郵送コスト、振込手続きといった運用負荷が軽減され、効果測定もしやすくなるため“一石二鳥”の施策だ。
では企業はどう動くべきか。まずは特典を「デジタル化」し、受け取りプロセスを最短化すること。次に、受け取り後の体験(使いやすさ、交換先の多様性)を担保することで顧客満足度を高める。価格訴求だけで短期的な集客はできても、継続率や愛着は生まれにくい。調査でも7割超が「特典は愛着や継続意欲を高める」と答えている通り、設計次第で長期的なロイヤリティに繋がる可能性がある。
結論として、入会特典は「何を渡すか」より「どう渡すか」が勝負を分ける。今求められているのは、手間をかけさせない“即時性”と、個人に選択肢を与える“自由度”だ。企業はこれを機に特典設計を見直し、顧客の利便性と満足度を同時に高める施策へ舵を切るべきだろう。