「選ばれるジム」になるために──顧客と経営者の“ズレ”から見える認知経路のリアル
フィットネスジムを取り巻く環境は年々活気づいています。健康への意識が高まる一方で、ジムの数も増え、競争が激しさを増しています。そんな中、「どうすれば自分のジムを知ってもらえるか」は、多くの経営者が頭を悩ませる共通の課題です。
この問いに対して、SEOの専門会社・ランクエストが実施した興味深い調査があります。フィットネスジムを運営する経営者と、実際にジムを利用している顧客の双方に「ジムを知ったきっかけ」を聞き、その答えを比較したのです。そこから見えてきたのは、想像以上に大きな“認識のズレ”でした。
経営者が信じている「見つけられ方」
ジム経営者が重視しているのは、やはり地元の人の目に留まる「看板」や「外観」、そして「チラシ」のようなアナログな手法です。道を歩いている人がふと目にして関心を持つ、あるいはポストに届いた案内に興味を惹かれる──そんな出会いを想定しているケースが多いようです。オンライン施策についても、検索エンジン対策やSNSによる発信などが挙げられていますが、その存在感はやや控えめ。地元密着型のビジネスゆえ、どうしても「リアルでの接触」に重きを置いてしまう傾向があるのかもしれません。
顧客が実際に「出会っている場所」
ところが、ジムを探していた顧客側の声を聞いてみると、少し事情が異なります。もちろん看板やチラシはきっかけになりますが、それに並ぶほど大きな存在として浮かび上がったのが、「友人や家族からの紹介」でした。身近な人のおすすめは信頼性が高く、自分に合ったジムを見つける大きなヒントになっているようです。さらに、インターネット検索でジムを調べて選んだという声も少なくありません。駅名や営業時間、設備の有無など、具体的な条件で比較検討できるため、効率よく情報を得たい人にとっては非常に便利な手段となっています。
ズレから見えてくる「改善のヒント」
この調査で明らかになったのは、「経営者の想定よりも、ネット検索や紹介がずっと重要だった」という事実です。逆に、マスメディアの影響や看板の力が思ったよりも限定的である可能性も浮かび上がっています。このズレは、改善のヒントとも言えます。まず見直したいのが、ウェブサイトの内容です。駅名や特徴的なサービスを含んだキーワードを盛り込み、検索されたときに見つかりやすくする工夫が必要です。また、サイトの情報はこまめに更新し、常に新しい内容を届けることで信頼性を高めていくことも大切です。
紹介制度についても、もっと積極的に活用できる余地があります。紹介した側とされた側の両方にメリットのある仕組みを整えたり、SNSでシェアしやすくしたりすることで、自然な拡散が期待できます。さらに、リスティング広告や比較サイトの活用も、見込み客に選んでもらうきっかけづくりとして見直すべきです。地域に根差した広告を展開することで、無駄なコストを減らし、効果的なアプローチが可能になります。
「見られる場所」ではなく「選ばれる場所」へ
フィットネスジムは、ただ目につけば選ばれるわけではありません。大切なのは、情報が届いたあとに「ここに通いたい」と思ってもらえる理由があるかどうかです。そのためには、どこで出会いが生まれているのかを正確に知り、その出会いをより良いものにする努力が求められます。リアルもオンラインも、どちらも大切です。ただし、そのバランスを見極め、顧客の行動に沿った発信ができているか。今こそ、情報の届け方を根本から見直すときなのかもしれません。