なぜ24時間ジムは広がりきらないのか?調査データから見えた課題と可能性
近年、フィットネス業界において存在感を高めているのが、24時間営業のジムである。ライフスタイルの多様化が進む現代において、「時間に縛られない運動環境」は大きな価値となりつつある。しかし、その実態は本当にユーザーのニーズに応えきれているのだろうか。株式会社NEXERとSynerGym(シナジム)による調査から、24時間ジムの現在地と今後の可能性が見えてきた。
まず注目すべきは認知度の低さである。「知っている」と回答した人は34.4%、「聞いたことがある」を含めても53.4%にとどまり、約半数は存在自体を十分に認識していない。都市部では店舗数が増えているものの、地方やフィットネス未経験層への浸透はまだ道半ばといえる。これは裏を返せば、適切な情報発信や導線設計によって大きな伸びしろがある市場とも捉えられる。
一方で、イメージ面においては明確な強みが確立されている。「好きな時間に通えて便利そう」と感じている人が約49%と最多であり、時間的自由度は24時間ジム最大の魅力として広く認識されている。特に早朝や深夜といった従来のジムではカバーしきれなかった時間帯へのニーズは根強く、仕事前の運動や、仕事終わりのリフレッシュといった具体的な利用シーンが想起されている点は重要だ。
しかし、その一方で興味関心は決して高いとはいえない。「利用してみたい」と答えた人はわずか11.6%にとどまり、多くの人が一歩踏み出せていない現状が浮き彫りとなった。その背景にあるのが、「安心」に対する不安である。特に深夜帯に対する恐怖感や、防犯面への懸念は根強く、利便性と表裏一体の課題として存在している。
実際に、興味を持つ層が求めているサービスの1位は「セキュリティ体制の充実」であり、過半数がこれを重視している。続いて「清潔な設備」「低価格」が並ぶが、いずれも“安心して継続できる環境”という文脈で捉えるべきだろう。単に安い・便利というだけでは不十分であり、「安全であること」「快適であること」が担保されて初めて利用意欲につながる構造が見て取れる。
また、自由回答からはより具体的なニーズも浮かび上がる。監視カメラの設置や警備体制の強化、女性専用エリアの導入といった声は、安心感を“見える化”する重要性を示している。さらに、地方における店舗不足を指摘する声もあり、立地戦略も今後の拡大における鍵となりそうだ。
24時間ジムは、「時間の自由」という明確な価値を持ちながらも、「心理的ハードル」という壁に直面している。今後の成長において重要なのは、このハードルをいかに下げるかである。例えば、セキュリティ対策の可視化や初心者向けサポートの充実、さらにはオンラインでの事前体験コンテンツなど、利用前の不安を解消する取り組みが求められるだろう。
市場としてのポテンシャルは十分にある。だからこそ、単なる“便利なジム”から、“安心して通い続けられる生活インフラ”へと進化できるかが、今後の24時間ジムの成長を左右するポイントとなる。ユーザーの声に丁寧に向き合い、課題を一つずつ解消していくこと。それこそが、この業態が次のステージへ進むための鍵といえるのではないだろうか。
